2018年4月6日

「DIASコミュニティフォーラム2018」開催報告

 

3月9日(金)、御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターにおいて、「DIASコミュニティフォーラム2018」を開催しました。当日は地球環境データを扱う研究機関やデータ活用をお考えの民間企業の皆さまを中心に、138名のご参加をいただき、より発展的なDIAS活用について議論を行いました。当日の資料は、以下のリンクよりダウンロードいただけます。
 

【午前の部】データプロデューサーセッション

午前のデータプロデューサーセッションでは、北本朝展 国立情報学研究所准教授によるオープンサイエンスに関する講演に続き、飯泉仁之直 農研機構・農業環境変動研究センター気候変動対応研究領域主任研究員より「研究者から見たDIASへのデータ登録の利点」と題し、研究データ登録におけるDIASの強みをご紹介いただきました。また、小野雅史 東京大学地球観測データ統融合連携研究機構特任研究員よりDIASにおけるデータ受入れの取り組みについてご説明しました。

DIASコミュニティフォーラム2018

左)北本朝展 国立情報学研究所准教授 右)飯泉仁之直 農研機構・農業環境変動研究センター気候変動対応研究領域主任研究員


 
後半は、参加者の皆さまの関心の高いテーマ(メタデータ管理、データ検索・公開システム、ライセンス・商用化、オープンサイエンス)の4テーブルに分かれ、オープンに議論する場を設けました。参加者の皆さまを交えた熱心な議論を通じ、データ評価軸としてのDOI整備、データ検索におけるレコメンデーション機能の有用性、データのニーズと供給を結ぶコンサルティング機能の必要性、データの持続可能性、といったさまざまな論点でご意見やご質問をいただきました。

DIASコミュニティフォーラム2018

テーマ別セッションの様子

 

【午後の部】データユーザーセッション

午後のデータユーザーセッションでは、本郷尚(株)三井物産戦略研究所 シニア研究フェロー/DIASプロジェクトマネジャーより「DIAS×地球環境データ」が創出し得る社会経済価値に関する話題提供に続き、生駒栄司 東京大学地球観測データ統融合連携研究機構准教授によるDIASのデモが行われました。

その後、「水・災害」「農林水産」「エネルギー・流通」の三分科会に分かれ、それぞれの分野で地球環境情報を用いたサービス事業を展開されている事業者の皆さまに事業紹介を頂き、DIASを用いたサービス展開の可能性について議論しました。

エネルギー・流通セッションでは、今冬の北陸や関東での豪雪を事例に、流通障害に対応するための降水量予測に関して紹介がありました。また情報のサービス化はニーズドリブンであるべきという指摘とともに、自然災害等だけでなく、位置情報ゲーム等のポジティブなニーズも喚起できると良いという意見がありました。

DIASコミュニティフォーラム2018

左)加藤雅也 名古屋大学宇宙地球環境研究所 研究員 右)右から:加藤雅也 名古屋大学宇宙地球環境研究所研究員、越智正昭 株式会社ハレックス代表取締役社長、関根正人 早稲田大学理工学術院教授


 
農林水産セッションでは、地球環境データを用いた農家や水産業者の経営管理能力向上の他、保険とファイナンスに地球環境データを組み合せていく過程おいてDIASのポテンシャルが活かせるというお話をいただきました。

DIASコミュニティフォーラム2018

左)右から:AGRIBUDDY CEO北浦健伍氏、損害保険ジャパン日本興亜(株)郷原健氏、株式会社グリーン&ライフ・イノベーション 高橋文宏氏 右)会場の様子


 
水・災害セッションでは、流量予測技術をあげることによる水力ダムの発電効率向上への期待が示唆されました。また、研究成果と社会実装とのギャップ改善の重要性も指摘されました。

DIASコミュニティフォーラム2018

左)右から:池内幸司 東京大学教授、小池俊雄 ICHARMセンター長、吉津洋一 関西電力(株)執行役員 水力事業本部副事業本部長土木建築室長併任、原田大輔 ICHARM専門研究員、玉川勝徳 ICHARM専門研究員 右)川崎昭如 東京大学特任教授


 
その後のポスターセッションも含め踏み込んだ議論が行われ、示唆に富んだご意見やご質問が多く寄せられ、活気にあふれるフォーラムとなりました。

 

プログラム

 

【午後の部】データユーザーセッション
13:30 - 13:40
開会挨拶
 本郷 尚(株)三井物産戦略研究所 シニア研究フェロー(DIASプロジェクトマネジャー)
国際排出量取引協会理事、ICAO市場メカニズムタスクフォース委員、GLOBE Japanアドバイザーなど。日経産業新聞「Eの新話」連載(2010年~)、Managing the Transition to Low Carbon Economy(共著)など。元国際協力銀行特命審議役。
13:40 - 13:55
DIAS紹介
 生駒 栄司 東京大学 地球観測データ統融合連携研究機構 准教授
2000年東京大学大学院博士課程修了。博士(工学)。在学中から地球環境情報に関するデータベースの研究に従事し、DIAS開始後は第1期からプラットフォームの開発・構築の中心的な研究者として従事。DIAS第3期ではリアルタイムデータを含む観測データ関連の管理・利用システムの開発・運用を行うとともに、開発チームの統括、外部プロジェクト・アプリケーション等との連携・調整を担当。
13:55 - 14:10
午前の部まとめ
 向井田 明(一財)リモート・センシング技術センター ソリューション事業部 部長
14:10 - 14:25休憩
14:25 - 16:25 分科会(3分科会毎並行実施)
水・災害セッション小池俊雄水循環と社会
小池 俊雄 国立研究開発法人 土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター (ICHARM) センター長
ICHARMセンター長、東京大学名誉教授、日本学術会議会員。社会整備審議会河川分科会会長、日本学術会議の防災関連委員会委員長等を兼任。専門は河川工学、水循環の科学、環境心理学。DIASの開発を主導するとともに、河川流域規模から地球規模の水循環の観測や予測研究を進める傍ら、合意形成を目的とした環境評価や行動に関する心理プロセスの研究を基に河川事業に関わる合意形成の実務に貢献。IPCC2007年ノーベル平和賞受賞貢献感謝状(2007)、中国科学院アインシュタイン教授賞(2009)、2010年日本水大賞国際貢献賞(2010)、水文・水資源学会学術賞(2015)等を受賞。
資料ダウンロード (PDF)
池内幸司水課題アプリケーションの概要と今後の展開
池内 幸司 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻 教授
1982年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了後、建設省に入省。内閣府(防災担当)参事官、国土交通省河川計画課長、近畿地方整備局長、水管理・国土保全局長、技監、国土交通省顧問などを経て2016年10月より現職。京都大学客員教授、筑波大学客員教授、日本大学客員教授、東京工業大学非常勤講師、中央大学兼任講師などを歴任。専門分野は、水害等の自然災害に対する防災・減災対策、良好な河川環境の保全・復元、老朽化が進むインフラの戦略的な維持管理・更新など。博士(工学)(東京大学)、技術士(総合技術監理部門、建設部門)
吉津洋一水力発電事業者の立場から見たDIAS水課題アプリへの期待
吉津 洋一 関西電力(株) 執行役員 水力事業本部副事業本部長 土木建築室長併任
1980年 関西電力(株) 入社。建設部土木課、 総合技術研究所 環境技術研究センター、建設部水力計画課、和歌山支店 土木建築課長、土木建築室 土木部長、北陸支社長を経て、2015年6月より、執行役員 水力事業本部副事業本部長 土木建築室長併任 (現職)。
 WEB-DHM作成GISシステム
玉川 勝徳 国立研究開発法人 土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター (ICHARM) 専門研究員
長岡技術科学大学建設工学専攻修了。日本工営株式会社中央研究所勤務後、東京大学にてDIAS第1期から地上観測データアーカイブに関する研究・調整を担当。また、陸面データ同化手法を用いた土壌水分推定関する研究に従事。2017年4月からICHARMにて流出モデル(WEB-DHM)の適用研究に従事。
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原田大輔土砂・洪水一体型モデル
原田 大輔 国立研究開発法人土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM) 専門研究員
2015年、東京大学大学院博士課程修了、博士(工学)取得。東京大学特任研究員を経て、2016年9月より土木研究所ICHARM専門研究員。専門は土砂や流木の挙動を考慮した洪水流の解析。また砂州の動態及びそれに規定される河川生態系について。
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 水力発電施設最適設計システム
川崎 昭如 東京大学 大学院工学系研究科 社会基盤学専攻 特任教授
横浜国立大学大学院工学研究科を修了後、アジア工科大学、東京大学生産技術研究所、同大学地球観測データ統融合連携研究機構(EDITORIA)等を経て、2018年1月より現職。
セッションチェア
藤井 秀之(一財)リモート・センシング技術センター つくば事業所
モデレーター
川崎 昭如 東京大学 大学院工学系研究科 社会基盤学専攻 特任教授
水・防災セッションまとめ
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農林水産セッション
北浦 健伍北浦 健伍 Agribuddy Ltd CEO
カンボジア在住。中学卒業と同時に渡米し、カリフォルニア州ウエスタン・ハイスクールに転入。帰国後、消費者金融会社経営などを経て2010年よりカンボジアに移住。農園経営を経て、AGRIBUDDY Ltd. を設立。同社はNIKKEI FINTECH CONFERENCE 2016最優秀賞。未来2017 SMFG賞、新経済サミット(NEST) 2017ピッチコンテスト最優秀賞など獲得中。
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高橋 文宏高橋 文宏(株)グリーン&ライフ・イノベーション
北海道大学水産学部漁業学科卒、漁業実習船に乗船し、延縄、刺網等の各漁法を学ぶ。一財)リモート・センシング技術センターにて衛星データの解析業務に従事、スペースフィッシュLLPにて沖合漁船向け漁業海況データサービスの開発・運用。現在、(株)グリーン&ライフ・イノベーション取締役兼技術開発部長(委嘱)
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郷原 健郷原 健 損害保険ジャパン日本興亜(株)企業商品業務部リスクソリューショングループ 課長代理/シニアアンダーライター
2007年に入社。大阪で企業営業を経験した後、2012年から現部署で日本における天候デリバティブの設計や、主に東南アジアの小規模農家を対象にした天候インデックス保険の開発を担当している。
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 セッションチェア
永野 嗣人 (一財)リモート・センシング技術センター ソリューション事業部 事業開拓課 課長代理(DIASプロジェクトサブマネジャー)
1997年日本電信電話(NTT)入社。以降IT業界で営業/SE/コンサルティングを約10年経験。2006年JAXA地球観測研究センター勤務を契機に、宇宙技術を利用したシステム企画に従事。担当分野は気候変動適応、農業、災害対応。活動地域は東南アジア、南アジア、太平洋島嶼国。
農林水産セッションまとめ
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エネルギー・流通セッション 本郷 尚 三井物産戦略研究所 シニア研究フェロー(DIASプロジェクトマネジャー)
国際排出量取引協会理事、ICAO市場メカニズムタスクフォース委員、GLOBE Japanアドバイザーなど。日経産業新聞「Eの新話」連載(2010年~)、Managing the Transition to Low Carbon Economy(共著)など。元国際協力銀行特命審議役。
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越智 正昭越智 正昭 株式会社ハレックス代表取締役社長
1978年、日本電信電話公社(現NTT)入社。ディジタル伝送黎明期に各種ディジタル伝送装置の実用化に従事。1985年、データ通信本部(現NTTテ゛ータ)に異動。公共分野において電子政府関連システムの開発と営業に従事。サービスインテグレーション事業部長、本社営業企画部長を経て、2009年、NTTデータを退職。この間、2003年に気象情報会社である株式会社ハレックス代表取締役社長に就任(当初非常勤)。NTTデータ退職と同時にハレックス社専任社長。同社独自のオンラインリアルタイム・ビッグデータ処理を用いたオリジナル気象サービス「HalexDream!」の開発を先導。
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関根 正人関根 正人 早稲田大学理工学術院教授
1988年早稲田大学大学院理工学研究科博士課程修了。工学博士。国土交通省社会資本整備審議会委員などを歴任。専門は河川工学・都市水防災工学。東京都23区を対象とした精緻な都市浸水予測手法を開発し、数値計算を通じて23区内の浸水リスクならびに浸水プロセスを解明。現在、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに「リアルタイム浸水予測システム」を社会実装することを目指して研究を継続中。
加藤 雅也加藤 雅也 名古屋大学宇宙地球環境研究所 研究員
2004年北海道大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻博士後期課程単位取得退学。現在名古屋大学宇宙地球環境研究所研究員。米国のメソ気象モデルMM5を用いた解析や、名古屋大学開発の雲解像気象モデルCReSS の検証・改良に携わる。現在 CReSSを用いた日々の高解像度シミュレーションを行い、この結果を用いた極端現象のデータ解析を担当。
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 セッションチェア
向井田 明(一財)リモート・センシング技術センター ソリューション事業部 部長
エネルギー・流通セッションまとめ
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16:25 - 16:50休憩
16:50 - 17:35
分科会まとめ
各分科会報告
各セッションチェアより
全体統括
向井田 明(一財)リモート・センシング技術センター ソリューション事業部 部長
17:35 - 17:40
閉会挨拶
 井上 準二(一財)リモート・センシング技術センター 常務理事
1974年、三菱商事入社。宇宙事業開発(観測・通信衛星)を担当。1993年、MIC Palo Alto事務所長。MC Silicon Vally社長兼務。1997年、三菱商事情報産業総括部長。2000年、MIC NY上級副社長。2003年より2011年まで、三菱商事執行役員、アイ・ティ・フロンティア社長、同会長等を歴任。現在、リモート・センシング技術センター常務理事。東京大学工学部卒。