2015年9月9日

モンゴル国立大学・名古屋大学 レジリエンス共同研究センターの設立に向けて


要旨

「レジリエンス」は深刻な事態からの「柔軟な回復力」を意味し、民族固有の文化や伝統にも配慮した、持続的で安全・安心な社会を構築するために重要な概念です。モンゴルや日本をはじめ、多くの国では、未解決の自然災害問題、地球環境及び都市問題に直面しており、レジリエンスの観点から今後の社会や国土構造のあり方を検討する必要性が指摘されています。こうした観点から、GRENE都市課題(課題代表者:林良嗣 名古屋大学)で行ってきたこれまでの研究成果を「レジリエンス研究」として発展させ、これを支える人材育成を図るためその課題機関である名古屋大学がモンゴル国立大学とともに「レジリエンス共同センター」を設立することを目指し、準備を進めています。

背景と課題

ウランバートル

都市化とモータリゼーションの進むウランバートル


モンゴルは1990年に民主主義・市場経済に転換し、1992年に民主憲法を制定して「モンゴル国」と国名を変更し、正式に社会主義を放棄しました。2003年からは土地私有化が始まり、首都が急激に近代化し、2010年代にはいると地下資源開発により経済がめざましく発展し、新国際空港建設や高速道路の建設など、都市開発が急ピッチで進んでいます。過密化に伴う交通問題や大気汚染問題は深刻化し、急激に膨張した首都は地震や水害をはじめとする自然災害に対する脆弱性を高めています。それにも関わらず、対策は置き去りにされ、さらに、2012年以降、先進国の例にならった都市再開発が進められつつあります。首都への一極集中の是正や地方との均衡のある開発計画を求める声も高まっています。

ウランバートル

ウランバートル郊外の伝統的遊牧地域


 

研究テーマ

当センターは、「レジリエンスとサステイナビリティを重視する視点からモンゴルおよび世界の環境・災害・社会問題を考える」ことを最重要テーマとしています。両大学は既に自然災害、環境、地域社会問題に関する共同研究実績があり、その成果を社会還元しつつ問題解決策を考えます。自然と調和したモンゴル伝統の柔軟な暮らし方を現代社会の中に活かすことによって、モンゴル独自のレジリエントでサステイナブルな社会を構想したいと考えています。具体的・短期的な対策にとどまらず、自然科学と人文社会科学の総合的な視点から考え、総合的・俯瞰的視野を育成することを目指しています。また、社会に開かれた議論の場をつくるために、以下の4つを行います。

  1. 教材・資料の整備
  2. 公開セミナーの開催
  3. 共同研究の企画および学生参画の促進
  4. 遠隔授業システムの導入可能性の検討等を実施予定

モンゴルにおけるGRENE都市課題メンバーによる活動実績

バトトルガ教授

バトトルガ教授
モンゴル国立大

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鈴木康弘教授
名古屋大学

バトフー前副学長(モンゴル国立大)

バトフー前副学長
モンゴル国立大


  1. 2014 年9 月15 日 モンゴル国立大学内で、第1回プレオープンシンポジウム「東日本大震災から学ぶレジリエンスの重要性」を実施しました。学生の他、学内外から100 名が参加して、共同研究センターの方向性を議論しました。
  2. 2014年10月13日 モンゴル国立大学内に、レジリエンス共同研究センター(準備室)を設置。モンゴルが直面する自然災害や社会問題に関する説明パネルを多数展示し、学生が集える場として開放しました。参加した学生からも反響が寄せられつつあります。
  3. 2015年5月15日 モンゴル国立大学内で、第2回プレオープンシンポジウム「Urbanization Control and Smart Growth Strategy towards Urban Resilience, Sustainability and Happiness(都市の靭性、持続性と幸福最大化のための都市化制御とスマートグロース戦略)」を開催しました。学生の他、学内外から100 名が参加してウランバートルの交通計画について議論しました。

「草原と都市」(風媒社)2015年3月刊行

草原と都市(風媒社)

モンゴルのレジリエンスに関する研究成果を書籍にまとめました。
編著者:石井祥子、鈴木康弘、稲村哲也

GRENE都市課題とは

GRENE都市課題は、大学発グリーンイノベーション創出事業「グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス(GRENE)」におけるGRENE環境情報分野の1課題です。GRENE環境情報分野は、環境情報を活用して気候変動への適応等の課題に取り組む大学・研究機関が、データ統合・解析システム(DIAS)を中核基盤とするネットワークを構築し、課題解決に向けた環境情報の利活用の促進及びそのための人材育成を図っています。

» グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス(GRENE)環境情報分野